注目を集めるセットアップオフィス コストと付加価値の最新事情   

近年、賃貸オフィス市場ではセットアップオフィス(内装付きオフィス)の供給が急増しています。以前は、空室状態の続くオフィスビルで、テナント誘致策として備えられることの多かったセットアップオフィス。「オフィスにかけるコストはなるべく抑えたい」、「オフィス家具は保有していないし、購入したくない」と考えるスタートアップ企業や小規模企業がセットアップを選ぶことが一般的でした。

しかし、オフィスの在り方が変化しつつある昨今、交通利便性の高いエリアの既存オフィスビルや、新築においてもバリューアップ施策として備えられるケースが増加。床面積では、20〜30坪が主流でしたが、現在では60 坪程度までは珍しくなく、100 坪ほどの貸室も登場しています。

当社の運営するセットアップオフィス&居抜きオフィスの専門サイト「Value Office」の掲載件数(セットアップオフィスのみで集計)は、2023年から2024年で約2.7倍に増加しています。掲載エリアも都内各所に散在しており、セットアップオフィスのマーケットが大きく拡大していることを実感します。

また、そのデザインや機能、貸室タイプもバリエーションが豊富。募集中の物件一覧をみるだけでも、セットアップオフィスが多様化していることが見てとれます。

当社の運営するセットアップオフィス&居抜きオフィスの専門サイト「Value Office」に掲載されている物件でも以下のような付加価値のある物件があります。

多様化物件の一例

共用部にラウンジスペース」のある物件一覧
「共用部に会議室」のある物件一覧
「屋上テラス」のある物件一覧

一方で、オフィスの移転や新設を検討中の企業から、「セットアップは賃料が高いから、当初から検討の土台に上がらない」という声が聴かれることもしばしば。

じつは、それは大きな機会損失になっている可能性も。セットアップオフィスを選ぶ企業の多くは、コストメリットとスピードが意思決定のポイントになっているのです。

今回のブログでは、そのマーケットを確立しつつあるセットアップオフィスについて、分かり易く整理していきたいと思います。

セットアップオフィスの現在位置

セットアップオフィスは、あらかじめ間仕切り、受付、会議室などに一定の意匠性をもった内装(物件によっては家具の設置まで)を施し、貸し出されるオフィスです。「内装付きオフィス」とも呼ばれます。

家具などを備えすぐに業務を開始できる状態で貸し出される場合はフルセットアップ、一方で内装が完成しているものの家具の用意が未完了で(=即入居可能ではない)、テナント側が追加で設置する前提で貸し出されるオフィスは、ハーフセットアップと呼ばれ区別されることもあります。

比較対象として挙げられることの多い「居抜きオフィス」は、原則として直前に賃貸借していた借主が施した内装デザインをそのまま引き継ぐ形態です。その内装は、前借主の資本力やビジネスの種類、経営者・従業員の好みなどが反映された比較的独自性のある場合が多いものとなります。

一方でセットアップオフィスは、貸主がマーケットのトレンドなどを考慮し汎用性をもった内装を提供するという点で、大きな違いがあるといえます。また、流通量、内装デザインの幅、面積とも選択肢が大きく広がっているため、従来は中小企業が中心でしたが、大手企業の支店やプロジェクト拠点としても活用しやすい選択肢となりつつあります。

オフィスの在り方の変化を背景に多様化

2000年代くらいまで遡ってみると、オフィスの在り方についての理解は、

・オフィスに毎日出社するのは当然のこと
・デスク、電話、複合機など最低限の備えがあればよい(オフィスとして成立する)

こういうものが一般的でした。一部の資金力のある企業が、凝った内装デザインにしたり、一部テレワークが導入されていたりという様子でした。

しかし、近年その価値観は大きく様変わりしています。ESG 経営の考え方が浸透しつつある昨今、コロナ禍での体験も大きく影響し、オフィスに出社することは既に当たり前ではなくなり、出社したくなるオフィスづくりに経営者は意識的に取り組んでいます。

オフィスには最低限の備えがあればOKという時代は過ぎ去り、従業員にとって居心地の良い、コミュニケーションが活性化する、集中力が高まり生産性が向上する、エンゲージメントが高まる、採用力が向上する、などなどオフィスに寄せられる期待は大きくなりました。

セットアップを企画する貸主側は、そうした経営課題を背景としたオフィスニーズをしっかりと理解し、課題解決を意識したデザイン設計を施すケースが増えました。

木などの自然の要素を多めに取り入れる、カウンター席やソロブースを備える、住居のリビングのようなフリースペースがあるなど、経営課題に即した一定の意匠性や、利用者の働き方、健康面までも考慮した家具類が備えられている(オプションで選択できる物件も)こともあるため、借り手は会社のバリューアップに繋げやすくなります。

ブランド展開するオフィスシリーズでは、新築オフィスにセットアッププランとして内装を設えたフロアを用意しているケースも多く、共有ラウンジや屋上テラスを備える物件や、全貸室に各テナント専用テラスを備えるなど、高付加価値で人気を博しています。

owns公式サイト(NTT都市開発)

セットアップオフィスのメリット① 内装費用を圧縮

セットアップオフィスは、従来型の何もない空間を賃貸借する場合と比較して、坪単価4,000~5,000円高く設定されている場合が多く、単価だけでみると割高でキャッシュアウトが多い貸室にみえます。しかし、オフィス内装を自社で一からつくる場合にかかる内装費用をセットアップオフィスでは圧縮することが可能です。

同面積の一般の貸室とセットアップオフィスを比較してみましょう。

<コストシミュレーション>

サンプルの値                                               
・貸室の面積 :30坪                                           
・一般の貸室 :月額賃料2万円/坪                                     
・セットアップ:月額賃料2.5万円/坪(差額0.5万円/坪、差額合計15万円)                  
・内装費用  :15万円/坪(東京都内の相場より)                              
                                                                                  

一般の貸室で、内装工事を施した場合の初期費用は450万円(15万円×30坪)。2年間での賃料と内装費用の合計を比較するとセットアップオフィスの方がコストメリットがある結果となりました。月額賃料の差が15万円のため、2年半経過すると両者のコストが等しくなる計算です(総額2,250万円)。

では、2年半以上の契約を予定している場合は、一般の貸室が良いかというと必ずしもそうとは言いきれません。企業の成長や事業内容の変化により、必要なオフィスの規模や機能が変わる可能性があるからです。セットアップオフィスは、変化する働き方や多様なビジネスモデルに対応しやすく、そうした点からもニーズが高まっていると考えられます。

その他、次に説明する入居時の二重賃料や原状回復費用の圧縮、検討段階の工数の削減効果などもセットアップオフィスの特徴であり大きな魅力と言えます。

セットアップオフィスのメリット② 二重賃料の圧縮、移転業務の工数削減&爆速化

一般的なオフィス移転は、以下のように進んでいきます。

新オフィスを探す・並行して内装計画
旧オフィスの解約予告を出す
新オフィスの賃貸借契約を締結する
新オフィスの契約開始(=賃料発生)・内装工事開始
移転
旧オフィスの原状回復工事
旧オフィスの解約

内装工事は、原則として契約開始日以降でしか開始できません。そのため、新オフィスの契約開始以降でも内装工事完了までは旧オフィスのまま。もちろん賃料は、新・旧双方を支払い続けることになります(これを「二重賃料」と呼んでいます)。セットアップオフィスでは内装工事がほとんど発生せず、契約開始日以降速やかに入居できるので、二重賃料の期間を最大限に圧縮することができます。

また、内装工事は以下のようなタスクがあり、通常1~3ヵ月、規模によってはそれ以上の期間を要します。移転企業の担当者はその分の手間をかけて対応にあたる必要があるのです。

・デザイン打合せ
・スケジュール調整
・ビル側との協議
・相見積もり/値段交渉
・発注/納品
・施工

しかし、セットアップオフィスを活用すると、これらの工数の大部分を低減できます。通常のオフィスと比べかなりスピード感のあるオフィス移転が実現します。

特に「すぐに入居したい」、「内装計画に時間を割けない」場合など、セットアップオフィスが最適なのです。

セットアップオフィスのメリット③ 保証金免除の物件&原状回復費用の低減

アーリーステージのベンチャー企業などにとっては、成長移転の障壁になりかねないのが保証金。賃貸オフィスでは、月額賃料の6か月~10か月程度の保証金(=敷金)を所有者に預けるのが一般的です。中規模以上のオフィスでは、1,000万円以上を預ける場合も少なくありません。

セットアップオフィスでは、保証会社と提携するなどして、保証金免除になる物件も登場しています。解約後に返却されるべきものとて、まとまった資金が塩漬けになるのを避けられるのは非常に大きいですね。

また、セットアップオフィスでも通常のオフィスと同様に原状回復義務を負うことは変わりません。ただ、物件によってはクリーニングのみで退去できる場合も。必ず入居時の賃貸借契約に定めがありますので、よく確認しましょう。

まとめ

今回は、セットアップオフィスを取り上げました。以下の点が本ブログのポイントです!

・流通量が拡大し、エリア問わず見つけやすい!

・デザインも機能も多様に!自社にフィットするオフィスをさがす価値あり

・コストと時間をかけずに、理想に近いオフィスが手に入る

賃料をなるべく抑えたいのは借主側の心理として当然ですが、セットアップオフィスに入居するメリットを考えてみると、その割高感も軽減されるのではないでしょうか。

FRSのオフィス移転先のご提案では、一般の貸室と合わせてセットアップオフィスをご提示することで、選択肢を広げていただいています。これからご移転を検討される際には、ぜひ比較検討材料としてご一考ください。

当社が運営している_居抜き/内装付オフィス専門サイト「Value Office」では、都内を中心に数多くのセットアップ物件を掲載しています。こだわり条件で絞り込みも可能です。

最後までお読みいただきありがとうございました!

(著:FRS広報チーム)