
—— 社会人の「睡眠リズムの乱れ」による日本全体の経済損失は、少なくとも年間1兆円規模
これは、世界的睡眠学者の柳沢正史・筑波大教授らの研究チームが、ダウンロード数2800万を超える睡眠ゲームアプリ「ポケモンスリープ」の国内ユーザ約8万人のデータを分析し推計したもので、昨年末に大きな話題となりました。アプリのダウンロード数からも睡眠への関心の高さを伺うことができますが、1兆円という額に驚かされます。実際に、
・慢性的な睡眠不足によるパフォーマンスの低下
・長時間寝たのに疲労感が抜けない
・会議中にくる耐え難い睡魔
こうした課題を抱えるビジネスパーソンは珍しくありません。
一例を挙げれば、Amazonの創設者であるジェフ・ベゾス氏。多忙を極めるトップ経営者でありながら、「8時間睡眠」を死守することで知られています。また、ベゾス氏は「経営層が報酬を得ているのは、数少ない『質の高い意思決定』のためである」と断言しています。睡眠不足によって疲弊し、意思決定の精度が下がることは、株主や組織に対する最大のリスクであるという考え方です。
こうしたトップランナーの姿勢からも分かる通り、睡眠は単なる「休息」ではありません。脳の老廃物を洗浄し、情報を整理・定着させることで、翌日の的確な意思決定を支える「投資」の時間なのです。本稿では、経営者の睡眠の質が低下する理由やリスク、睡眠の質を向上させるメソッドについて、学びを深めていきたいと思います。
目次
その睡眠不足は会社のP/Lに直結する
本来、睡眠には、私たちの心身を最適化するための、極めて重要な役割が備わっています。
・成長ホルモンの分泌や身体組織の修復や再生の促進(疲労回復)
・免疫システムを整え、抵抗力を高める(メンテナンス)
・情報や記憶を整理、定着させる(情報整理)
・神経細胞の活動を整え、興奮状態をリセットする(脳機能の安定化)
などが挙げられ、脳や身体を正常に保つため必要不可欠な現象です。
——忙しいのだから寝る時間なんてない
——今は休むことより、経営判断を優先すべきだ
多忙を極めるリーダーにとって、それは避けては通れない現実かもしれません。しかし、その懸命な姿勢が、結果として「事業成長のブレーキ」となってしまうリスクもあります。なぜなら、経営における最大のアセット(資本)はリーダー自身の心身であり、そのコンディションを支える根幹が「睡眠」だからです。
睡眠不足が常態化することで、
・論理的思考力やリスク分析能力が低下し、重要な局面で判断の機微を見誤る
・集中力が持続できず、本来なら短時間で済むタスクに倍以上の時間を要してしまうなど、パフォーマンスが低下する
・ストレス耐性が低下することで冷静なマネジメントができず、チームの士気や人材の定着率に悪影響を及ぼす
これらのような事象を招く可能性があります。
交感神経暴走のメカニズム、「戦闘モード」の脳
忙しい経営者が睡眠時間を確保しにくいのは、まぎれもない事実。また、短い時間しか寝られず、且つその「質」が低ければ、疲労回復という目的が達成されません。睡眠の効果最大化を阻害する要因は、睡眠時の「交感神経の暴走」。
自律神経は、活動時の交感神経(アクセル)と、休息時の副交感神経(ブレーキ)で成り立っています。組織の牽引者は、日中、常に危機管理と問題解決を求められるために、この交感神経が極度に優位な状態が続きます。問題は、ベッドに入ってからもアクセルが緩まないこと。本来はメンテナンスのために充てるべき睡眠時間が、これらに阻害されるため役割を全うできません。
過剰な「危機管理」習慣
リスクを予測することが習慣化されているため、脳が「監視体制」を解けず、深い休息への移行が妨げられます
脳のタスク未完了
誰にも相談できない不安や未解決のタスク(心配事)が、睡眠中も脳のワーキングメモリを占有し続け、休止モードに入れない
ストレスホルモンの抑制不全
日中の高い緊張により、睡眠中もコルチゾール(ストレスホルモン)の分泌が続き、浅い睡眠(レム睡眠)が長くなる
交感神経が暴走した結果、最も重要な深いノンレム睡眠(徐波睡眠 / NREM)の時間が削られます。ノンレム睡眠は、脳の老廃物を排出し疲労を回復させる不可欠な時間。中断されたり短縮されたりすると、以下のような深刻な非効率が発生します。

睡眠時間を量で追わず、質で生産性を担保する攻めの睡眠戦略が必要。交感神経の暴走を意図的に止め、「質」を高めてリカバリー効率を最大化することが重要です。
忙しい経営者のための「時短×高効率」3つの快眠ハック
ここからは、「睡眠の質の向上」にフォーカスし、着手し易い3つの快眠メソッドをご紹介していきます。
① 入眠の効率化 「不安の吐き出しノート」で脳を即座にシャットダウン

ベッドに入ってから資金繰りや明日のタスクが脳裏をよぎるのは、脳が、「この問題を忘れると明日困ったことになる」と判断しているため。これを防ぐのが「不安の吐き出しノート」です。思いのまま、感情のままに書いていくことで、タスクが整理されたり、不安要素が見える化され客観視できるようになったりします。
戦略:脳のワーキングメモリを強制的に解放、脳のキャッシュをクリアする
方法:
1. 枕元にメモ帳とペンを置きます。安心して書けるものであれば、どのようなものでもかまいません
2. 明日の重要タスクや懸念事項を、あえて「書き出す」ことで可視化する
3. 書き終えたら、「記録したので今日はこのタスクは一旦クローズ(忘れてOK)」と脳に明確に伝えてあげます
効果:脳の負荷を下げることで入眠までの時間を劇的に短縮、スムーズに深い睡眠に入れます
ノートに書き出すことで、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が抑えられるという研究結果もあり、効果的な方法のひとつです。
② 午後のパフォーマンスを最大化 「カフェインナップ」
睡眠時間が取りにくい経営者こそ、日中の「脳のオーバーヒート」を防ぐために戦略的に仮眠を取り入れるべきです。仮眠の前に摂取したいのがコーヒーなどのカフェイン。
カフェインは、胃や小腸で吸収され、血流に乗って脳に到達し、眠気の原因物質(アデノシン)をブロックしはじめるまでに20分〜30分かかると言われています。そのタイムラグを利用して午後のパフォーマンスを最大化させましょう。

戦略:短時間の仮眠&カフェインの効果的摂取でパフォーマンス最大化
方法:
1. 毎日13時~15時の間のどこかに仮眠時間(15分〜20分)を確保しておきます(スケジュールをロック)
2. 仮眠前にコーヒーなどカフェインを摂取します(カフェインナップ)。
効果:目覚める頃にカフェインが効きはじめ、起床後すぐにフルスロットルで業務に入ることができます。カフェインの働きによって集中力低下を防ぎ、パフォーマンスが向上することで業務時間を圧縮。睡眠時間の確保(睡眠「量」の確保)にもつながります
③ 最高のROI 「寝具への投資」
会社にとって最大の資本である経営者自身の「身体」。翌日からの英気を養うリカバリータイムには、最適なリカバリーアイテムの存在が欠かせません。
戦略:最高のリカバリーアイテムを駆使してROI(投資対効果)最大化
方法:
1. 高付加価値なマットレスや枕を「翌日の高いパフォーマンスを得るための設備投資」と考え見直します
2. 身体の形状や歪み、睡眠の課題を把握する
3. 最適なアイテムを選定し、利用する
効果:リカバリーアイテムによって睡眠の質を高めることで高い集中力の維持、パフォーマンスの向上が期待できます
寝具メーカー大手の日本橋西川では、最先端の3Dスキャンシステムで全身の骨格・姿勢のゆがみまで可視化できる測定サービスが受けられます(※要事前予約)。約150万点の測定点で体型データを取得する「N3D-body」では、全身の形状をミリ単位で3D計測、全身18箇所のゆがみを検出、枕やマットレス選びに必要な各数値(13項目)を測定してくれます。さらに店舗には、眠りのプロ「スリープマスター」が測定、測定結果に合わせた寝具の選定までをサポートしてくれるそう。

高付加価値の寝具メーカーには、試用期間や返品保証を付けているメーカーもあるため、身体に合わない場合やトラブル時には安心です。
睡眠の質を低下させるNG行動
睡眠の質を向上させるのも大切ですが、リカバリー効率を低下させる行動も避けなければなりません。以下の2つの行動は睡眠の質を低下させるため注意が必要です。
・寝酒(深酒)
アルコールは脳の活動を抑制する作用があるため入眠を早めます。しかし、睡眠時に眠りが浅くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりします(中途覚醒)お酒は晩酌にして、就寝の2~3時間前までに飲酒を終えるのがオススメです。
・ベッドでのスマホ操作
深夜にオフィスへ引き戻されるのと同じ効果をもたらします。暗くなると分泌されるメラトニンという睡眠ホルモンが、太陽光に近い性質をもつブルーライトを見ることによって、脳が昼間と勘違いしてしまいます。また、スマホでSNS、メール、ニュースなどをみると脳は情報処理を開始、興奮状態(ドーパミンの放出)に導きます。その結果、脳が再起動(リブート)し、交感神経の暴走が始まります。
まとめ

経営者の身体は、会社にとって最大の資本です。睡眠を単なる「休み」ではなく、「判断の精度を高めるための投資」と捉えてみてはいかがでしょうか。戦略的に眠る。そのシンプルな選択が、組織のパフォーマンスを最大化させる一助となります。
質の高い睡眠が会社の未来をより力強いものにする原動力となるはずです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
(著:FRS広報チーム)