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  • 定番から新常識まで!「間仕切りのいろは」

    定番から新常識まで!「間仕切りのいろは」

    一棟のオフィスビルの中でも、入居するテナントごとに空間の使い方は実に様々。まったく同じ区画であっても、まるで違った印象を受けることも少なくありません。オフィス空間の印象や機能、快適さに差異が生まれるポイントとは、いったい何なのでしょうか。

    決定的に差がつくポイントはズバリ、

    ゾーニング

    にあります。ゾーニングとは、オフィス内を目的・用途ごとに最適化して区切っていく作業のこと。その工程において必要不可欠なのが「間仕切り」です。

    「間仕切り」は、いくつかのパターンに大別することができ、市場に流通する間仕切り関連のプロダクトも多数。ゆえに選定は煩雑さを感じるかもしれません。しかし、自社の目的に合致したものを採用することは、オフィス価値最大化の観点から軽視することはできません。

    そんな「間仕切りのいろは」を整理してお伝えしたいと思います。

    「間仕切り」とは何なのか

    「間仕切り(まじきり)」とは、建築物の内部を、用途に合わせて仕切るために設置される壁などのこと。「内壁(ないへき)」と呼ばれることもあります。

    オフィスなど、人が集まって働く場には、受付エントランス、執務室、会議室、OAコーナー、リフレッシュエリアなど、用途ごとにいくつかの空間に分けるのが一般的。これらを用途ごとに区切る役割を担うのが、「間仕切り壁(まじきりかべ)」なのです。

    間仕切り壁を立てる主な理由は、

    • 空間の独立性を保つため
    • 外からの視線を遮るため
    • 遮音性を高めるため
    • デザイン性を高めるため

    などが挙げられます。まずは上記に挙げた4点について詳しく説明します。

    ・空間の独立性を保つ

    会議室など、限られた時間内で建設的な議論を進めるためには、周囲から隔離された密閉空間のほうが好都合な場合も少なくありません。また、執務室内においても、情報漏洩防止やプライバシー保護の観点からも、間仕切り壁によって空間ごとに扱う情報を区別することも。

    ・外からの視線を遮る

    執務室から会議室への視線、来訪者から執務室内への視線など、フルオープンというわけにはいかないケースも。空間ごとの用途に相応しい間仕切り壁を立てることによって、情報漏洩抑止、また、視線を気にせずに業務に集中できることで生産性向上の効果も期待できます。

    ・遮音性を高めるため

    重要な経営課題についての議論、非公開に進められるプロジェクトや人事評価など、会議室外に音が漏れ出してはならないシーンは多いもの。そんなときには遮音性能の高い間仕切り壁が活躍します。また、案外忘れがちなのが「外側から会議室内への音」。高い集中力で業務を遂行するためには、内外の音の遮断は重要なテーマです。

    ・デザイン性を高めるため

    オフィス空間が機能性を追求されたものであることは非常に重要ですが、一方で、快適に過ごせる空間にはデザイン性も大切。理想の環境を実現するためには、間仕切り壁もうまく利用して空間を演出していきましょう。

    次に、主な間仕切り壁について、種類ごとに解説していきます。

    LGS造作壁

    LGS造作壁は、オーダーメイドなので最も自由度が高い間仕切り壁。

    LGSとは、Light Gauge Steel(ライト・ゲージ・スティール)、またはLight Gauge Stud(ライト・ゲージ・スタッド)の略。木材や軽量鉄骨(LGS)を使用して壁の基礎を造っていきます。

    木材・軽量鉄骨で作った壁の表面には、クロスを貼って仕上げるのが一般的。クロスの種類・質感などによって、デザインはまさに自由自在です。必要に応じて遮音性能を高めることも可能です。

    一方、オーダーメイドであるがゆえの留意すべきポイントも。

    • 骨組みから造作していくため、パネル型のパーティションよりも工期が長め
    • 設置後のレイアウト変更時には、パネル型のように脱着はできず、スクラップ&ビルドをともなう

    これらを考慮しておけば、LGS造作壁は機能性もデザイン性も柔軟にアレンジが可能な間仕切り壁といえます。

    アルミパーティション

    画像引用:ナイテックス社Webサイトより

    アルミパーティションは、アルミ製の支柱を立て、その間にパネル(樹脂化粧合板パネル)をはめ込むタイプの間仕切り壁。

    アルミの比重は2.7と非常に軽量であるため(※鉄の比重は7.8)、搬入や施工がしやすいのが大きな特長です。その軽さにも関わらず、一定の強度がありコストパフォーマンスは◎。低予算・短納期の工事などでは、アルミパーティションは大活躍します。

    近年、豊富なカラーバリエーションだけでなく木目パネルやガラスパネルの登場など、デザイン性の高いものが流通しています。複数種類のパネルやガラスなどを組み合わせ空間にアクセントを付けるのも有効です。

    なお、パネルは比較的薄いため、遮音性や断熱性(保温性)等については、他の部材に比べて大きな期待はできません。

    スチールパーティション

    スチールパーティションは、一般に芯材である石膏ボードを2枚のパネル表面板で挟む構造の間仕切り壁。

    主な部材はスチールや石膏ボードなどの不燃材であるため、不燃性に優れています。また、支柱がパネルの内側に収まるため、シンプルでスッキリしたデザインに仕上がるのも大きな特長。

    この構造から、密閉性が高く、パネル厚も40mm~90mm程度あるため遮音性にも優れています。欄間(らんま)の空いたタイプもあるので、採光、空調や消防関連の諸問題にも柔軟に対応可。

    デザイン性についても、ガラスを組み合わせる、表面をダイノックシートで装飾したり、塗装するなどの方法によって、柔軟に演出できるのも好材料ですね。

    ローパーティション

    画像引用:コマニー社Webサイトより

    ローパーティションは、大きな工事を伴わずに簡易的に空間を分けることができる間仕切り壁。

    既成のパネルを組み合わせるものや、ドアの付いたタイプまで、じつにバリエーション豊富。ロビーなど大空間のテーブルごとに簡易間仕切りとして利用されるシーンの多いプロダクトです。

    ローパーティションの高さは、設置場所の目的に合わせて選びます。以下を目安に検討してみると良いでしょう。

    1200mm着座時に視線が遮られる高さ。着座で業務に集中しやすい
    1600mm着座時に身体全体が隠れる高さ。半個室として利用できる
    1800mm立位時に身体がすっぽり隠れやすい高さ。壁に近い役割で別の空間を作れる

    直線だけでなく、L字、T字、コの字など連結方法に差を付けることで、空間の用途に対応できる点も魅力。パネルの素材には、ファブリック、樹脂化粧合板、ポリカーボネートなどがあり、単色や木目など豊富なカラーバリエーションも魅力です。

    ガラスパーティション

    ガラスパーティションは、ガラスで構成された間仕切り壁です。

    そのデザイン性の高さから、会議室の通路に面した壁に選ばれることが最も多い利用シーンです。透明なガラスの素材の特性から、しっかりの空間を分けられつつも、

    • 他のパネルタイプに比べて圧迫感を与えにくい
    • 空間を広く見せる視覚効果がある
    • 採光性が高いため明るく開放的な空間を演出できる

    こういった効果が期待できます。スチール・アルミパーティションのどちらとも併用できるものが販売されているので、柔軟に活用できます。

    プライバシーに留意したい場所では、ガラス面の一部または全部にフィルムを貼れば半透明にすることで目隠しができ、デザイン性も一層高まります。

    スライディングウォール

    画像引用:小松ウォール社Webサイトより

    スライディングウォールは、使用シーンに応じて空間をアレンジできる可動型の間仕切り壁。「可動式パーティション」とも呼ばれます。

    一度に大勢の人が集まれる会議室には一定のニーズがありますが、一般にその利用頻度は決して高くはありません。せっかく用意したスペースが無駄になってしまうこともしばしば…。そんなときに活用したいのが、このスライディングウォールです。

    スライディングウォールは、天井に設置されたレールにパネルを吊り下げることによって、シーンに応じて大きな空間を小さく区切ったり、逆に広げることも可能。古くはホテルの宴会場などで主に使われてきた手法で、リモコン操作などで電子制御できるものも流通しています。素材は、木製、ガラス製やアクリル製などが各メーカーから販売されています。

    以上、代表的なラインナップをご紹介しました。

    次に、近年特に採用する企業が増えている、いわゆる「ゆるやかに仕切る」タイプの間仕切り方についてご紹介していきます。

    ゆるやかに空間を間仕切る

    最後にご紹介するのは、間仕切り壁を立てずに、収納家具やグリーンなどを上手に活用し、ゆるやかに空間を間仕切る方法。近年多くなってきているゾーニング方法です。その背景には、

    • テレワーク導入企業の増加
    • 自由に働く場所や時間を選択できる「ABW(Activity Based Working)」型オフィスの採用

    などの働き方の多様化があります。

    これらによって従業員の自由度は高まりましたが、一方で組織内でのコミュニケーション希薄化が課題として浮き彫りになりました。毎日オフィスで顔を合わせるのが当たり前だったものが、そうではなくなったのですから必然なのかもしれません。

    その課題解決策のひとつが、「間仕切り壁は必要最低限にして、ワークプレイスをなるべくフラットに保つ」という考え方。そうすることで出社中の従業員同士は情報を得易くなり、次のような効果が期待できます。

    • 雑談を促し、コミュニケーション活性化
    • 偶発的なコミュニケーションが生まれ新しいアイデア創出
    • 部門間の連携強化を促す
    • 刺激を与え合い、モチベーション向上

    以下に一部ではありますが、3つの事例をご紹介していきます。

    ① 家具によって、ゆるやかに仕切る

    ハイシェルフなど、高さのある収納家具によって、ゆるやかに空間を分けるのも有効な方法。デザイン性の高いオブジェなど以外にも、業務上使用頻度の高い書籍やカタログなどの資料を置いておけば一石二鳥です。

    ② ルーバーによって、ゆるやかに仕切る

    「ルーバー」とは、羽板(はいた)と呼ばれる細長い板を、枠組みに隙間をあけて平行に組んだもの。窓に設置されるものは「鎧戸(よろいど)」「ガラリ戸」と呼ばれます。空間を分けるのにもルーバーは有効。空間の広がりは保持しつつ、別の役割をもったエリアであることを明示することができます。

    ③ グリーンによって、ゆるやかに仕切る

    外出前後の短時間の一時利用者などに重宝されるタッチダウンスペースは、慌ただしく動き回る従業員ほど利用頻度が高いもの。グリーンはそんな忙しい従業員の心に平穏を取り戻させてくれます。

    おわりに

    今回のコラムは、オフィス空間の有効活用に大切な「間仕切りのいろは」についてお送りしました。

    繰り返しになりますが、間仕切りを選択する際は、求める効果・目的などの狙いを定めつつ、予算と工期を鑑みて決定していく必要があります。できれば増員計画など、将来発生しうるレイアウト変更なども考慮して選定できれば尚良ですね。

    FRSは、小さな会議室の間仕切りの選定でも、膝を突き合わせてお客様と議論させていただく徹底した伴走していくスタイルです。どうぞご遠慮なくお声掛けください。

    最後まで読んでいただき有難うございました。

    (著:FRS広報チーム)

    参考資料

    ・DESIGN PANEL [version 4.0]ee(ナイテックス) 

    ・ローパーティション PORTIA(コマニー) 

    ・マイティ-スライディング LW-60D(小松ウォール)