
2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行にともない、いよいよ世の中が通常モードに戻ってきました。自粛していた旅行、大規模なスポーツイベント・音楽フェスの開催、屋内商業施設にも急速に客足が戻っているとか。
オフィスでは、コロナ禍でのテレワーク中心の働き方から、出社率が上昇傾向へと推移。コミュニケーション不足、マネジメント難などの問題から、実際に顔を合わせて働くことの重要性を多くの企業が再認識。様々なメリットを享受できるテレワークは継続させながらも、オフィス出社を併用するハイブリットな働き方にシフトしつつあります。オフィスをいかに働く場所として選ばれる場にするかを、各企業が真剣に考え始めました。
出社率が少しづつ上昇しオフィスに人が増えてきているなかで、高確率で起きている弊害があります。それが、
圧倒的な、会議室不足
という問題。今回のコラムでは、そんな会議室不足が起きている現状と、その解決策について整理していきたいと思います。
なぜ会議室が不足するのか

コロナ禍という災禍が、加速度的に普及を後押ししたテレワーク。テレワークを行なうためのもっとも重要なインフラがWeb会議です。
コロナ禍の約2年間で、「対面で行なうのが望ましいこと」と「Web会議で充分可能なこと」が肌感覚で棲み分けられるようになり、ほとんどの打ち合わせ・会議はオンラインで充分に事足りることが分かりました。
従来は客先に訪問し顔を合わせて行なったもの、社内のフリースペースで行われていたものを含め、オフィスに人が戻り始めた今も、多くの打ち合わせ・会議がオンラインで行なわれています。Web会議の頻度はコロナ渦と同様に高い状況のまま、出社率が高まれば、会議室は当然足りなくなります。
Web会議では、音漏れや、周囲の声・人通りはどうしても気になるもの。そのため、重要度合、機密度合とは無関係に、Web会議のために個室の会議室を専有するケースが多く、そのことも会議室不足に陥る大きな原因となっています。
コミュニケーションの促進を目的に出社を促す企業においては、社内が活気あふれる状況こそ目指すべき環境かもしれませんが、会議室不足につながる「オフィスの音問題」という課題も無視できません。
オフィス回帰が進む今、オフィスでは、
- 会議室が空いていなく、自席でのWeb商談では周囲の雑音が入るため集中できない
- デスクワーク中に、近くでWeb会議されると仕事に集中しにくい
- Web会議だと、つい声量が上がり会議室外に音が漏れている
- 個室で会議したい緊急な事案があっても、会議室予約がとれない
- 会議室をWeb会議のために1人で使用している
- 会議室の大きさの割には利用人数が少なくミスマッチ
こんな状況が頻発しているというワケです。
オフィス出社率をめぐる動向
前述のとおり、コロナ禍を契機にリモートワークを導入・推進していた企業が、出社での勤務を奨励する方針へと転換しつつあります。以下の調査は2022年末時点のものですが、新型コロナウイルス感染症の5類移行より半年以上も前に、既に出社率の平均値が実態、意向ともに約70%になっていることが分かります。
表1 出社率(実態/意向)

調査から6か月経過した現在では、完全出社を求める企業も増加傾向にあるとか。このように、出社率を一定割合まで戻していきたい意向を示す企業が増加する一方で、興味深いデータも。以下の表2の調査結果では、オフィスの在籍人数に対する座席確保数が、減少傾向にあることが分かります。
表2 オフィス在籍人数に対する座席数の割合

もっとも多い割合を示しているのは100%超の座席数を確保している企業ですが、その割合は2019春の68.1%から、2022秋では51.9%へと減少。さらには、100%未満の座席数の確保と回答している企業は、2019春の8.9%から、2022秋では24.0%と大幅に増進しています(過去最高水準)。コロナ禍を契機に、
- テレワーク普及による出社率の減少をうけてのオフィス面積の最適化(減床)
- 不透明な先行きを考慮した固定費の圧縮
これらを実行した企業が少なくなかったことが分かります。
会議室不足の課題解決策は

さて、そんな深刻化しつつある会議室不足を解消するためには、どのように対処したら良いのでしょうか。ここでは、難易度ごとに手軽なものから3つの段階に分けて解決策を提示したいと思います。
難易度1 運用ルール・ツール導入(手間★/費用★)
① 会議室の運用ルールの啓蒙
もっとも導入ハードル、コストとも低い方法は、会議室の運用ルールを整備すること。会議室の大きさや設備などによって、利用人数、用途や時間の目安を設定することで、会議室が公平に活用できるようにプランニング、周知していきます。
また、オフィスのフリースペースでも問題なく実施できる打ち合わせが個室の会議室で行われるケースも考えられます。会議室以外の場所の利用を促す啓蒙を行なうことで会議室不足の解消に繋げることができます。
しかし、ルールを公表するまでは比較的カンタンですが、浸透させるのは決してカンタンなことではありません。
そんなオフィスの運用ルール周知のためには、ピクトグラムの活用も一役買ってくれます。過去のコラムでもご紹介していますので、ご参照ください。
② 会議室の予約システムの活用
運用だけでカバーしきれないときは、デジタル・テクノロジーに頼るのも常套手段。昨今の会議室予約システムは、オンライン上で社内外から空き状況を閲覧可能、予約してあるのに会議室を利用していない場合には、一定時間経過後に自動的に予約解除されるシステムも。
③ 単一指向性マイクの導入
会議室を占有する理由で大多数を占めるのが、音の問題。Web会議の相手方の声はイヤホンやヘッドセットなどを装着することで対処できるケースもあります。こちら側から余計な音などの情報を相手方に送らないためには、「単一指向性マイク」がオススメ。
「指向性」というのは、マイクが音を拾う方向のこと。360度全方位から音を拾ってくれるものを「全指向性」というのに対して、一方向からの音を上手に拾ってくれるのが「単一指向性」というワケです。数千円~数万円(プロ志向のものはそれ以上も)まで多種ありますが、無線タイプで、ノイズキャンセル機能を有したモデルでも比較的安価に入手可能です。
難易度2 ウェブブース導入、レイアウト変更(手間★★/費用★★)
① ウェブブースの導入

コロナ禍で大ブレイクしたプロダクトのひとつが、このウェブブース(※メーカーにより異なる呼称あり)。大掛かりな工事をともなわずに設置できることが、このプロダクトの特徴。繰り返し解体・組立ができることから、コストの圧縮に繋がります。複数名が使用可能なウェブブースもリリースされていますので、1on1(ワンオンワン)のMTGにも最適。
ウェブブースについては、以下の記事で詳しく紹介していますのでご参照ください。
② レイアウト変更(機能エリアの増設)

執務スペースと会議室スペースの区分を見直す、紙の書類をデータ化して省スペース化するなどして、空いたスペースに集中ブース、ファミレス席や半個室などをつくるのも有効な手段のひとつ。完全に密閉されていないブースでも、Web会議は充分に実施可能です。
紙資料のデータ化は、DXの入口にもなり、業務効率の向上にも貢献します。
③ レイアウト変更(会議室の分割化)
会議室は足りないのなら増やせばいい、という考えももちろん有効。Web会議で利用しやすい少人数用の会議室をつくるために、既存の大きい会議室を分割して個室を増やすのもひとつの方法です。

難易度3 サテライトオフィスの構築、オフィス移転(手間★★★/費用★★★)

① サテライトオフィスの導入
サテライトオフィスは、通常勤務するオフィスとは別に、交通利便性の高い場所に設けられることの多い、通信設備やセキュリティを備えたオフィスです。サテライトオフィスを各所に構築することによって、本社などに従業員が一局集中するのを防止できるため、本社内の会議室不足を解消できる可能性があります。
以下のリンクからフォーバルグループで構築したサテライトオフィスのご紹介ページをご覧いただけます。合わせてご参照ください。
Group Satellite Office Project
② オフィス移転orリニューアル
最後にして究極の手段がオフィス移転やリニューアル。手間とコストという意味では高負荷である可能性が高いですが、現在の従業員数と働き方、未来の姿・理想の姿にとって最適なオフィス環境をゼロベースから構築できるのがオフィス移転の優れたポイント。コロナ禍以降で変化した働き方、経済状況を鑑みて、もっとも合理的な判断となる可能性も充分にあります。

見直しポイント
- 会議室の大きさと部屋数の見直し
- Webブースの設置
- コミュニケーションエリアとソロワークエリアのメリハリ
- フリーアドレス制度の導入
- オフィス家具の見直し
- ペーパーレス化
さいごに

今回は、オフィス回帰がもたらした会議室不足問題と、解消する代表的な手段をいくつか提示させていただきましたが、働き方やオフィスの運営方法は企業の数だけ存在するもの。現状把握や、課題解決方法はプロに任せてみてはいかがでしょうか。
FRSでは、豊富なオフィス構築の実績のなかで、あらゆる課題解決を担ってきました。会議室不足や音問題といったお悩みはもちろん、オフィスを最適化する際の課題や問題点を、プロダクトの導入からご移転のサポートまで多様なサービス展開で解決いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました!
(著:FRS広報チーム)