継続的な運用と見直しが必要。防災備蓄とBCP対策

東日本大震災や九州での大規模な台風被害など、災害のたびに社内備蓄、BCP対策、在宅ワークの導入などの重要性が報じられます。その影響もあって、備蓄品を常備している法人や個人は随分増えた印象です。

しかし、準備した備蓄品のなかで、使用期限や食品の賞味期限を定期的にチェックしているでしょうか。また、緊急時にどのように運び出すとスムーズなのかの検討や、家族や従業員に、その存在を周知していますか。災害対策は、準備だけでは決して終了ではありません。

今回は、オフィスにおける備蓄品と、BCP対策の見落としがちなポイントについて整理していきます。

災害対策は、定期的な見直しが肝

食料品は、ゴミ処理までを考慮

防災への危機感から、社内に備蓄品を揃える企業やビルが増えましたが、実際に食べてみたことのあるかたは多くないのではないでしょうか。非常食で見落としがちなポイントは、こちら。

・大人数で食べると周囲に臭いが広がる
・ゴミ処理が非常に面倒なものがある
・アレルギーをもつ従業員の存在を考慮していない
・サイズの大きな非常食ばかりになる

ある企業では、賞味期限が近い非常食を社員に配布、日頃から作り方・食べ方を体験させているそう。そういった機会を設けておくと、有事の際は慌てずにすみそうです。サイズ問題は、冷蔵庫の使用不可な状況を想定し、使い切りサイズが推奨されます。

簡易トイレは、運用が大切

非常時は、水道が止まる事も考えられ、水洗トイレは使用不可になることも珍しくありません。すると、トイレの臭い・汚れが目立つようになり、行きたくなくなる人が増え、我慢し続けた結果、体調が悪化する人が出る…という悪循環が起こります。トイレに関するポイントは、こちら。

・非常用トイレセットの使い方を知らない
・排泄物の処理方法が分からない

非常用トイレは、使い方、運用方法を考慮しておきましょう。ゴミ袋には、排泄物に適した臭いにくいものも販売されていますので、ご検討ください。

帰宅困難者に関して

災害時は、むやみに移動しないのが原則ですが、さまざまな理由から帰宅を試みる人が増えると考えられています。内閣府が公表している帰宅が可能かの判断基準は、

帰宅距離10km以内の人は、全員帰宅可能
帰宅距離10km~20kmでは、被災者個人の運動能力の差から1km長くなるごとに帰宅可能者が10%ずつ低減する
帰宅距離20km以上の人は全員帰宅困難

とあります。帰宅希望者がおさえておきたいポイントは、こちら。

・帰宅路は把握する
・20km以内でも、道中の障害などにより迂回が必要なケースも
・社内で同じ方面に帰宅する人を見つけておく
・長距離歩くことを想定し、防災マップ、携帯備蓄品、スニーカーなどを用意

災害当日いきなり何十キロも歩ける人は稀です。ある企業では、 自宅の近い人同士でチーム分け、健康イベントと絡めて会社から自宅まで歩いて帰ってみる施策を実施しているそう。参考にしてみてください。

有事の際は、帰らずに留まるという選択が必要な時もあります。総合的な判断をしましょう。

マスクを常備する

災害時においては、衛生面や感染症リスクを考慮して「マスク」の準備も大切です。マスクの準備でポイントになるのは、

・災害が起きたあとには、マスクの購入が困難になる
・救急セット内のマスクだけでは不足しがち
・災害時にマスクが全員に配布されるのは考えにくい

使い捨てのマスクは衛生面から非常に便利ですが、全従業員分マスクを用意している企業はそれほど多くないのでは。解決策のひとつとして、今回は「プロテクティブマスク」というマスクをご紹介します。

プロテクティブマスクは医療用の不織布マスクですが、複層構造の繊維が病原菌をブロック、使い捨てではなく表面に汚れが目立つまで着用が可能なので経済的です。

まとめ

都心直下型地震が遠くない未来に起こる可能性も指摘されています。そのための備えとしても、備蓄品は大切。準備して満足するのではなく、

・定期的にチェックする
・運用面で改善を繰り返す
・こまめな社内周知

などを怠らず、有事の際には余裕をもって行動できるように心の備えをしておきましょう。

参考資料

・大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン

・帰宅困難者等に係る対策の参考資料