
今回のコラムは、オフィス移転のプロジェクトマネジメント(PM)について。
耳馴染みのないかたもいらっしゃると思いますが、オフィス移転に際して、PMを知っておくのとおかないのとでは、選択肢の幅が大きく変わってきます。
例えば、以下のようなケースに2つ以上当てはまる場合は、PMを選任すると大きなメリットが享受できます。
□フロア面積100坪超のオフィス移転
□従業員50名以上のオフィス移転
□ハイグレードビルへのオフィス移転
□拠点統合など複数拠点の移転の同時進行
□オフィス移転を経験しているプロジェクト専任の担当者がいない
□移転プロジェクトに割く時間がない
企業成長につきものであるオフィス移転は、いつ起こるか分からない重要なイベント。この機会にぜひ委託すると便利なPM業務について理解を深めてみてください。
目次
オフィス移転のプロジェクトマネジメント(PM)とは

(オフィス構築における)「プロジェクトマネジメント(PM)」とは、オフィスの構築のために必要な要素(RFP取り纏め、スケジュール検討、コンペティション運営、設計デザインパートナー決定、設計評価、FFE調達、全体コスト管理、全体工程管理、各種届け出、社内調整支援など)の一連の業務を統括することをいいます。オフィスの新設や移転などでは、物件選定フェーズから依頼をする場合も多くあります。
オフィス移転に関わるタスクは、多岐に渡ります。その代表的なタスクを物件選定も含めた場合で例示してみると、
- 組織、拠点計画や人員計画の確定
- 自社の課題のリストアップ(人員に対する床面積、オフィス運用、立地、等々…)
- オフィス移転の目的の明確化およびコンセプト策定
- 全体予算シミュレーション
- プロジェクト担当者(またはプロジェクトチーム)の選任
- 不動産マーケット情報収集
- 現オフィスの契約確認(解約予告期間、違約金、等々…)
これらのことを経営側に確認し、プロジェクトの担当者は移転先のオフィス計画業務に着手します。
- 不動産の要件定義(ロケーション、面積、コスト、等々…)
- 候補物件リストアップ
- 候補物件の事前比較と評価
- 物件内覧とレイアウトテストプランの作成
- 不動産コストシミュレーション
- 賃貸借契約交渉
- 不動産契約
- ビル館内規則や館内総合サインの確認、等々…
候補物件が固まり始めたら、内装デザイン計画も。
- 現状把握(什器備品や設備の種類・数量)
- ICT機器導入検討
- セキュリティ計画
- ゾーニング及びレイアウトプランの作成
- 内装デザイン計画
- 什器計画
- 設備計画
- 実施設計
- 内装予算策定/見積依頼/予算調整
- 各種工事手配
- 申請手続き、等々
それらの内装デザイン計画と並行して、
- 通信ネットワーク構築(回線手配/電話機/LAN機器)
- 新オフィス運用計画策定
- 機密文書廃棄
- 自動販売機/オフィスグリーン手配
- 各種届出/設定変更(官公庁関係、銀行関係、登記変更、社員証の変更、等々…)
なども重要です。佳境となる引越し関連も、大いに骨の折れるタスクが目白押しです。
- 移転準備(梱包材の数量把握や手配)
- 移転に関わる部門調整(移転マニュアルの作成、移転説明会の実施、等々…)
- 新規備品関係受取設置
オフィス移転の規模(フロア面積、従業員数など)が大きければ大きいほど、業務は煩雑に。関係者の数も増えるために、トラブルの発生確率は乗数的に増えていきます。
移転に伴うタスクは、オフィス移転起案時点から数えると少なくとも300項目以上。詳細にまで落とし込むと、なんとその数は600~1000項目以上にもなります。

これらの煩雑なタスク管理を代行してくれる強い味方が、プロジェクトマネジメント(PM)なのです。
PMでは、プロジェクトを牽引する役割のプロジェクトマネージャーがお客様の環境を細かにヒアリングし、抜け漏れのないタスク一覧を作成します。そのうえで、想定されるリスクを回避するための最適なスケジュールを作成します。

これらタスクリストとスケジュールの精度が高いほど、プロジェクト進行上の羅針盤となって成功への道筋が明るくなってくるわけです。
プロジェクトマネジメント(PM)を委託するメリット

前述のように、オフィス移転というプロジェクトには膨大なタスク量と複雑な工程、大勢の関係者との連携をともないます。PMは、プロジェクト全体の品質管理、コスト削減、スケジュール管理(=QCD:クオリティ/コスト/デリバリー)を担う存在。それぞれみていきましょう。
1. 品質管理
オフィス移転プロジェクトでは、社外の登場人物が多数存在します。
登場人物の例)
オフィスビル所有者(貸主)/仲介会社/ビル管理会社/ビルメンテナンス(BM)/ビル清掃会社/防災センター・守衛/ビル指定工事会社(B工事)/設計デザイン会社/電気・LAN配線工事会社/内装施工会社/什器仕入れ先/設備工事会社/廃棄業者/通信ネットワーク工事会社/ベンダーマシン会社/オフィスグリーン会社/物流会社/公官庁(消防署/税務署/警察署/労働基準監督署/法務局)等々…
プロジェクトをスムーズに進行するためには、日常業務では登場頻度の少ない外部関係者との連携が必要です。オフィス移転の選任担当者でない場合や、経験値が少ない場合、その負担やリスクは計り知れません。専門知識と経験値を有したPMが窓口となりハブ役としてプロジェクトを遂行することで、クオリティが一定に保たれ、且つ通常業務を遅滞する懸念を払拭することができます。
2. コスト削減
専門知識や経験値のないままにオフィス移転プロジェクトを進める場合、余計な出費をともなうケースが少なくありません。外部関係者から提示されるコスト(見積りなど)が適正かどうかは、物差しがなければ判断することができません。コストコントロールにも、PMの手腕が発揮されます。
① B工事からC工事へ工事区分交渉
B工事とは、貸主の「指定施工会社」が行なう工事で、借主が費用負担する区分になります。B工事はコスト比較がしにくい「指定」という特性上、オフィス移転におけるコスト増の大きな要因となり易い重要な部分。このB工事の区分をC工事(借主の選任する施工会社が行ない、借主が費用負担する工事)に変更するための交渉も、PMの大きな役割のひとつです。C工事に変更できた場合、過剰なコスト増を防ぐことができます。
※主なB工事範囲は、スプリンクラー工事、防災設備工事、空調換気工事、電気工事、(間仕切工事、内装工事)で、ビル毎に設定が異なります
② VEとCDのバランスの調整
VE(バリューエンジニアリング)とは、価格上昇をおさえながら価値を向上させること。一方でCD(コストダウン)とは、最低限の機能を損なわずにコストを下げることをいいます。プロジェクトに関わる関係会社からの見積りや施工内容などが適正かどうかを判断、VEとCDのバランスを調整していきます。
③ 施工会社との価格交渉
見積りの内容を把握し、内容が適切かどうかを判断するのもPMの大きな役割です。PMのもつ経験値・相場観に照らしたり、相見積もりを実施するなどして交渉していきます。
3. スケジュール管理
移転に関わる膨大なタスクを抜け漏れなく遂行させるためのスケジュール計画は容易ではなく、移転成功のカギとも言えます。適切なスケジュール管理が行われ、何をいつまでに意思決定をしなければいけないのかが明確になれば、社内調整や検討の時間もしっかりと確保することができます。また、内装部材や什器など納期に時間がかかるものも、幅広い選択肢の中から最適な選定が可能です。
次の章では、FRSでご提供しているPMについて、ご紹介させていただきます。
FRSのご提供するプロジェクトマネジメント(PM)とは
ここでは、FRSの提供しているPMメニューについて、5つのポイントをご紹介します。
1. プロジェクトメンバーの内製(専門人材の確保)
オフィス移転プロジェクト成功のためには、プロジェクトメンバー各々の知恵を終結させたり、連携していくことが肝要です。ほんの少しの連携漏れが致命的なミスに繋がることも…
FRSのPMでは、プロジェクトマネージャーはもちろん、コンストラクションマネージャー、デザイナーなど主要メンバーはすべて社内リソースで揃えているのも大きな特長。日頃から各専門人材が実務を行っているため、全ての領域でFRS内にノウハウが蓄積されています。そのため、法令関係や品質管理、コンペの取り纏めもスムーズです。
プロジェクトメンバーの内製による連携やノウハウ蓄積により、属人的な判断により発生するトラブルも回避することができます。
■プロジェクトマネージメント(PM)に参画可能なFRS専門人材
- プロジェクトマネージャー
- リーシングコンサルタント
- オフィス空間デザイナー
- コンストラクションマネージャー
- 通信ネットワークエンジニア
- ICTコンサルタント
■フォーバルグループリソース(DX/ペーパーレス/電子契約/Pマーク/企業研修/eラーニング/RPA/WEB/カタログ・チラシ/名刺/印刷物/環境貢献)

2. クライアントファーストな徹底した伴走型支援
FRSのPMは、お客様の目的を達成するため、徹底的にお客様の視点に立ち状況理解を深めていきます。書類や備蓄品等の収納計画の最適化、運用ルールの策定、オフィス移転に関する社内説明会の開催サポートなどを行なうほか、プロジェクト完了後には、オフィス運用に関するサーベイ・効果検証など、オフィス設計の効果をより精度の高いものにしていくためのあらゆるサービスを提供可能です。
まずは、オフィスの使い方などの細かい部分までお客様に耳を傾けます。プロジェクトの目的が明確になったら軸をぶらさずに情報提供をし、お客様の判断をサポートする徹底的な伴走型支援をおこないます。
3.リニューアルプロジェクトの経験も豊富
FRSではこれまで3000件以上の企業様のオフィスプロジェクトを承り、その中でも移転を伴わないリニューアルプロジェクトも多数手掛けさせていただきました。オフィスリニューアルが移転と大きく異なるのは、新オフィスが完成してからスイッチ(移転)することができない点です。さらに、業務稼働を止めずにオフィスリニューアルをさせたいという要望も少なくありません。そのため、移転と比べ工数が多く綿密なスケジュール調整も必要です。例えば、仮囲いでエリア分けをして計画的な段階工事でプロジェクトを進めることもあります。FRSでは、そのような難易度の高いリニューアルについても、数多くの知見をもち得意としています。
働き方改革の潮流、コロナ禍など、近年のオフィス環境を巡る状況が激変しています。オフィス空間の利用効率の最大化、ハイブリッドワークのための環境整備、コミュニケーション活性化施策などはリニューアルによっても実現させることが出来ます。オフィスがどのような意味を持つ場所なのか、どう活かすべきか、など軸をぶらすことなく、課題解決につながるリニューアルプランをご提示します。
4. アフターフォローも万全
プロジェクト完了後も、組織・チーム再編成にともなう大小レイアウト変更や再設計、ネットワークの課題解決など、オフィスに関するお悩みはすべて対応いたします。プロジェクトに関わったメンバーが内製である強みと、フォーバル・グループの総合力で、お客様に伴走し続けます。
5. 委託する業務のカスタマイズでコスト面も安心
プロジェクトマネジメント(PM)における業務委託契約でありがちなのは、見積もりの「〇〇一式」という分かりにくい内容と項目の羅列。これではサービスの範囲と深さが妥当なのかどうかは分かりません。お客様の必要な役務に絞り、必要な工数をべースとしたお見積りも、FRSがお客様からご好評をいただいているポイントです。
FRSでは、ヒアリングを元に必要な業務範囲とFRSが受託する実務の深さまで協議をして工数を算出、単価を乗じてお見積りいたします。ご予算に合わせての調整も可能なため、お客様にとって納得感のある価格に着地することができます。
さいごに

今回は、オフィス移転におけるプロジェクトマネジメント(PM)について取り上げました。
FRSでは、オフィスの新設、ご移転、リニューアル等々、どのようなプロジェクトでも伴走可能です。また、私たちが関わらせていただくタイミングは、早ければ早いほど、クライアント様の負担も軽減されます。プロジェクトが検討段階であっても、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(著:FRS広報チーム)