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  • 侮るなかれ。オフィスの音問題

    侮るなかれ。オフィスの音問題

    隣室から漏れ聞こえてくる会話、空調・複合機の機械音など、度々取りざたされるオフィスの音問題。さらに、近年のワークスタイルの変化は、問題を一層複雑化。業務に支障をきたす音環境に、頭を抱えている企業が後を絶ちません。

    根本的な解決方法は、

    ・ガラスパーティションにペアガラスを採用する
    ・OA床下から天井上まで間仕切る(スラブ・トゥ・スラブ)
    ・「静か」と「にぎやか」をエリア分けしたレイアウト

    など、入居前のオフィス計画時点ではこれらの方法が有効。しかし、入居中となると話は別。解決方法は限定されます。今回は、入居中のオフィスの音問題を紐解きながら、解決策を提示していきます。

    オフィスの音問題とは

    オフィスの音問題は、集中力の低下、コミュニケーションの阻害や情報漏えい、さらには健康への悪影響など、決して軽微ではない問題を引き起こす可能性があります。

    原因となる代表的な音引き起こされる事象
    ・社内での会話、通話中の声、来客時などの音声
    ・コピー機、空調、機器の振動などの機械音
    ・足音、椅子の音、ドア開閉、タイプ音など動作音
     
    ・音や声に気を取られ集中力が低下する
    ・騒音によるストレス増、パフォーマンス低下
    (長時間蓄積されると健康被害のリスクも)
    ・業務上必要な会話難、コミュニケーション低下
    ・隣接会議室同士の音声が筒抜け、情報漏えいに
     その他

    このように、オフィスの音問題は「我慢すればよい」という問題ではなく、あらゆるリスクをはらんでおり、優先度の高い課題として取り組むべき問題のひとつなのです。

    働き方改革がもたらした新たな音問題

    労働人口の減少、長時間労働問題、働き方の多様化など、日本の労働市場が抱えるさまざまな社会問題を解決するため、急ピッチで改善が図られつつある労働環境の整備。近年のコロナ禍によって提唱されたステイホームや三密の回避の呼びかけが、その変革にさらに拍車をかけました。

    令和に入って以降の、音問題に大きく影響するトピックスが、Web会議の増加と、オープンオフィスの浸透の2つです。

    ●Web会議の増加

    テレワーク、フレックスタイム制や、ABW(従業員が業務内容・状況などに合わせて働く場所や時間を自由に選択できる働き方)が、大手企業を中心に導入され、現在では中小企業をはじめ多くの企業で浸透しつつあります。

    その結果、一気に増加したのが、ビジネスパーソン同士がオフィスで顔を合わせないで行なわれるWeb会議。いまや働き方の多様化に欠くことのできない利便性の高いWeb会議ですが、その一方でこれらの問題も生じています。

    オフィス内でのWeb会議件数の増加による会議室不足
    Web会議は声が大きくなる傾向、周囲に聞こえやすい
    自席でのWeb会議で、周囲の音声が社外に漏れ聞こえてしまう
    周囲のWeb会議によって集中が妨げられる

    4つのうち3つが音に関する問題。Web会議の浸透が音問題に深く関わっていることがよく分かります。

    ●オープンオフィスの増加

    オフィスの存在意義のうち、もっとも重要な要素は「コミュニケーションの促進」や「一体感の醸成」。近年の働き方の多様化により、その重要性を再認識した企業は多いといいます。

    これらを実現する有効な手段のひとつが、オープンオフィスと呼ばれる壁・間仕切りなどを極力廃した見通しの良いレイアウト方法です。やはり、大企業や成長著しいベンチャー企業で採用されるケースが目立ちます。

    このオープンオフィスも、運用方法を考えておかないと弊害が生じる可能性もあります。

    周囲の音が聞こえやすいため、集中力の妨げになっている
    遮るものが少なく、プライベートな会話も漏れ聞こえやすい
    視界が開けすぎていて、ストレスを感じる人がいる

    こちらでは、3つの問題のうち、2つが音問題の範疇です。

    オフィス内の音問題対策5選

    オフィスの音問題を解消していくためには、まずはその原因を特定、要素分解していくことが大切です。実際に採用する手前では、専門家に相談することをおススメしますが、ここでは5つの解決策の例をご紹介します。

    ①    吸音効果のある間仕切りの採用

    オープンスペース内にあるテーブルを吸音効果のあるパーティションで囲ってあげることで、隣接するエリアとの音問題の軽減がはかれます。

    YURT(画像引用:稲葉製作所 電子カタログ)

    こちらは会議スペース向け、集中ブース向けなど、用途に合わせてスタイルを選択することができ、デザイン性も高い秀逸なプロダクトです。

    また、デザイン性と開放感を両立させつつ、吸音・目隠し効果を実現する吸音ルーバーも有効。緩やかに空間を隔てる木板は、あたたかみをも演出してくれます。

    木目ルーバー(画像提供:DORIX社)

    ②    吸音パネルの導入

    ガラスパーティション、コンクリート壁、スケルトン天井などを使った意匠にこだわった会議室では、音が反響しやすい、天井部分からの音漏れなどの問題が発生しやすいため、音問題を回避する手段を講じる必要性大。

    そのような環境には、反響音を軽減しクリアな音で声が聞き取りやすくする吸音パネルを壁面に設置するのが有効。吸音パネルは、各メーカーから豊富なラインナップがリリースされているので、オフィスのデザインに合うものを選んで設置しましょう。

    デザイン性に富んだ壁面設置の吸音材

    また、ガラスパーティション向けの吸音材では「iwasemi™ HX-α」が注目されています。音響メタマテリアル技術を応用したガラスに貼れる透明吸音パネルが、ガラスの反響音を抑え、話しやすいクリアな空間を実現します。

    IWASEMI(Pixie Dust Technologies)弊社施工事例より

    ③    ウェブブースの導入

    Web会議浸透による会議室不足、周囲の音声や会話の漏れを解消してくれるのが、コロナ禍をきっかけに急速に広まったウェブブース。

    弊社施工事例より

    現在では、定番のソロタイプから複数名用途まで、多くのメーカーからプロダクトがリリースされています。Web会議などだけでなく、短時間集中のソロワークや、社内の1on1会議にも有効、その活用用途を広げています。

    ワークポッド(画像引用:コクヨ公式サイト)

    ④   サウンドマスキング・オフィス用BGM

    周囲の会話を聞こえにくくする方法のひとつに、音によって音声を遮る方法があります。

    マスキング音という音楽を流すことによって、情報漏えいや周りの会話による集中の阻害を防止するサウンドマスキング。周囲の音を聞こえにくくする効果だけでなく、集中を促したり、リラックスさせる効果が期待できるものも存在します。シチュエーションに合った音楽を選ぶことで、オンとオフの切替えが容易になり、パフォーマンスの向上や生産性の向上を実現できる可能性があります。

    また、ヒトは静かすぎる環境ではかえって集中できません。対策として、川のせせらぎ、木々のざわめきや鳥のさえずりなどの自然音を取り入れることで、集中を促す効果が期待できます。

    ⑤    グリーンを取り入れる

    観葉植物は、視覚的な癒しによるリラックス効果や、空気も浄化作用が想起されがちですが、じつはオフィス内の騒音低減にも期待できます。

    植物の葉や茎には、無数の小さな孔(気孔)があり、音を吸収するスポンジのような役割を果たします。植物内に入った音が、孔の中で反射を繰り返すうちにエネルギーが失われ、音が小さくなるというわけです。

    また、植物に含まれる水分にも、音の振動を吸収する効果が期待できます。

    まとめ

    今回は、オフィスの音問題を取り上げてきました。

    音問題の改善は、マイナスをゼロに近付ける効果にとどまらず、生産性の向上や、従業員の帰属意識を高め、業績にも貢献する重要な課題解決となり得ます。

    FRSのオフィス設計では、音問題の解消についてもあらゆるソリューションメニューを保有、ご提案しています。ぜひお気軽にご相談ください。

    さいごまで読んでいただきありがとうございました。

    (著:FRS広報チーム)

    参考資料

    ・YURT(稲葉製作所 電子カタログ)

    ・フェルメノン 木目ルーバー(DORIX)

    ・これからの働く環境のあり方を見据えた環境配慮型オフィス(オフィス移転naviブログ)

    ・ワークポッド(コクヨ)

    ・IWASEMI(Pixie Dust Technologies)