オフィス空間づくりを通して、企業の経営課題に伴走する私たちFRS。不動産・内装・ICT(通信)の3つの部署が密に連携し、お客様の環境整備をトータルでサポートしています。日頃は「移転や空間デザインのプロ」としてご相談いただくことが多い私たちですが、洗練された空間を活かすためには、快適な通信インフラが欠かせません。今回は、FRSの大きな柱の一つであるICT部門(SI事業部)が手掛けた、大規模な通信課題の解決事例をお届けします。

商号:株式会社ベストライフ
事業内容:有料老人ホーム等の運営・居宅介護支援事業所の運営 グループ会社の運営管理・業務支援および「ベストライフ」ブランドのフランチャイズ展開
有料老人ホームを全国200か所以上で展開されている株式会社ベストライフ様。「利用しやすい価格で安心の毎日を」という企業方針のもとで信頼と実績を重ねられ、全国1万1千名を超えるご入居者様を抱える、介護業界のリーディングカンパニーです。
同社は2025年、全国の全施設において大規模なWi-Fi環境整備に踏み切られました。200施設を超える規模でのWi-Fi整備は、単に「通信環境が便利になった」というレベルにとどまりません。
物理的な条件が全く異なる200以上の施設において、均一で安定した、そして安全な通信環境を整えるという大プロジェクト。これにより実現したのは、ケアの質の向上と現場の業務効率化です。その中でも同社が最も熱望していたのが、Wi-Fi整備による「見守り支援システム」の全館導入でした。
今回、この全国規模のインフラ整備を一手に請け負ったFRSが、プロジェクトの舞台裏と、見守りシステムの導入によって現場にどのような変化が生まれたのか、詳しくお話を伺いました。
「200施設」という壮大なスケールで進める、介護DXへの挑戦
改めまして、全国200拠点近い規模でWi-Fi環境を整えることに踏み切られた理由から教えていただけますか。
一番の理由は、ご入居者様にこれまで以上の安心と安全をお届けしたかったからです。ベストライフでは、ご入居者様へのより良いケアにつながる新しい取り組みは積極的に行う方針です。その中で、Wi-Fiを活用した体動センサー「見守り支援システム」は、まさに今の時代に求められているサービスだと確信し、全国すべての施設へ導入することを決めました。
これまでは、Wi-Fiが建物内の一部でしか使えない施設がほとんどだったため、このシステムを最大限に活かすために、全国の拠点で建物全体の通信環境を一新するという決断に至りました。
その「見守り支援システム」とは、具体的にどのようなサービスなのでしょうか。
マットレスの下に体動センサーを配置することで、離れた場所にいるスタッフがタブレットからご入居者様の状態をリアルタイムで把握できるシステムです。例えば、ご入居者様が睡眠中なのか、それともベッドから起き上がろうとされているのか、さらには心拍数など、さまざまな状態がデータとして手元に届きます。
介護現場では、限られた人数で多くのご入居者様を見守る必要があります。このシステムは、目に見えない早期の変化を察知し、必要な対応を迅速にとれるようになることが期待できるサービスです。
特に「導入して良かった」と実感されるのは、どのようなシーンですか。
例えば、ご入居者様がご自身で動かれてベッドから転落してしまうような緊急事態でも、システムが即座に察知して通知してくれます。可能な限り早く駆けつけることができるのは本当に心強いですね。最近では、心拍数の変化からインフルエンザなどの感染症の兆候を早く察知できた事例もあり、現場にとっては非常に大きなインパクトがありました。
決め手は、常に「同じ目線」で並走してくれる長年の信頼関係

ご入居者様にとってもスタッフの皆様にとっても、大きなメリットがあるのですね。ただ、これだけの大規模な通信整備となると、ご検討の段階で課題や懸念点もあったのではないでしょうか。
そうですね。やはり約200拠点という前例のないスケールでしたので、懸念は尽きませんでした。一番大きかったのは「セキュリティ面」です。ご入居者様のデリケートな個人情報を扱う以上、情報漏えいリスクへの対策は最優先事項でした。
また、すでに稼働している既存の業務システムやネットワークに影響が出ないかという点も慎重に検討しました。新しい通信負荷によって日々の業務に支障が出ては本末転倒ですからね。さらに、拠点ごとに建物の構造も異なるので、通信品質のばらつきを抑えつつ、いかに現場に負担をかけない運用を両立させるかが大きな壁でした。
そうした多くの懸念がある中で、今回FRSにプロジェクトをお任せいただけた最大の決め手はどこにあったのでしょうか。
これまでの長年のお付き合いの中で築いてきた「信頼関係」が、やはり何よりも大きかったと思います。もともとFRSさんには、今回の全館導入の前から一部の施設で通信環境をサポートしていただいていましたよね。その際も非常に手際よく対応していただいていましたし、通信の品質やセキュリティ面でも、もともと安心感を持っていました。
改めて大規模導入が決まった際も、私たちの要望や現場の複雑な状況をしっかり理解した上で、本当に適切な提案をしてくださいました。「FRSさんなら安心して任せられる」という認識は、社内でも自然と共有されていましたね。トラブルが起きた際も臨機応変かつ迅速に解決へ導いてくださり、単なるベンダーではなく、同じ目線でプロジェクトを引っ張ってくれる強力なパートナーだと感じたことが最終的な決め手です。
現場の負担はゼロ。どの施設にも丁寧で、臨機応変な対応

多くの拠点にわたる導入工事の過程で、特に印象に残っているエピソードなどはありますか。
実は「印象に残っているトラブルが何もない」ということ自体が、一番印象的であり、高く評価しているポイントなんです。これほどの規模の工事になれば、どこかの拠点で大きな混乱やトラブルが起きるのが普通だと思いますが、それが本当にスムーズに進みました。
施設ごとに物理的な環境が全く異なりますが、どの施設に対してもFRSさんは丁寧にかつ臨機応変に対応してくださったおかげだと感謝しています。一度だけ、図面からは読み取れなかった「電波の届きにくい死角」が見つかったことがあったのですが、その際も現場で柔軟かつスピーディーに配線や機器の配置を調整していただき、あっという間に解決してしまいました。
タブレットとインカムの全館活用が、現場に「心のゆとり」を生む
見守り支援システムだけでなく、全館Wi-Fiを活用したタブレットの利用やインカムの導入によって、現場の働き方にはどのような変化がありましたか?
タブレット自体は以前から導入していたのですが、これまでは通信環境の制約から、特定の場所でしか記録入力ができませんでした。それが全館でつながるようになったことで、場所の制約がなくなり、スタッフの動線が効率化されました。
また、全館Wi-Fi化を機に導入したインカム(音声通信)が、スタッフの動きを大きく変えました。これまではPHSを使って1対1で連絡を取り合っていましたが、インカムなら全員に一斉伝達できます。急を要する事態が起きた際も、格段に速く状況を共有し、チームで対処できるようになりました。
通信環境が整ったことで、ご入居者様への「ケアの質」そのものにも変化の兆候は見られますか。
はい、確実に変わってきています。インカムの活用によって、緊急時のオペレーションが劇的に進化しました。「看護師の招集」「ご家族への連絡」「バイタル測定」といった役割分担がその場で瞬時に行えるため、救急隊が到着するまでの時間を大幅に短縮できたケースも生まれています。
また、高齢者施設ですので、ご入居者様のお看取りの場面もあります。見守り支援システムで状態の変化を早期に察知し、インカムでスタッフ間が素早く連携できるようになったことで、ご家族様が最期の瞬間に間に合うよう、余裕を持ったご連絡を差し上げられる機会が増えました。これは介護施設の現場にとって、本当に意義深く、大切なことです。業務が効率化されたことで、スタッフの心にもゆとりが生まれ、これまで以上に目の前のご入居者様に寄り添うケアができていると感じます。
今後のデジタル活用の展望
素晴らしい変化ですね。それでは最後に、今後のデジタル活用の展望についてお聞かせください。
私たちは、ベストライフの主役であるご入居者様の安心・安全につながるものであれば、新しい技術や製品をこれからも積極的に検討していきたいと考えています。今回のプロジェクトによって、全拠点のインフラ(Wi-Fi基盤)が整いますので、今後は新しいICT機器をスムーズに導入できるようになりました。この土台を活かした、さらなる業務効率化にとても期待しています。
現在、社会全体で人手不足が深刻化しており、介護業界も例外ではありません。だからこそ、テクノロジーの力を借りてシステムに任せられる部分は任せ、私たち人間にしかできない「対人介護の時間」をしっかりと確保することで、サービスの品質をさらに高めていきたいですね。今後はケアマネージャーの業務負担軽減なども視野に入れたAIの適切な活用による役割分担なども進めていけたらと考えています。

~現場の施設長に聞く、Wi-Fi整備後のリアルな変化~
以前は1階でしかWi-Fiが繋がらず、上の階からわざわざ下りて記録を入力したり、通信が途切れてデータが消えないか焦るストレスがありました。全館Wi-Fi化でこの現場の負担がゼロになり、劇的に効率化しています。 また、PHSの時は命を繋ぐために優先順位の高いスタッフから順に個別に電話していましたが、インカムに変わったことで全員へ一斉に情報共有が可能になり、連携スピードが格段にアップしました。導入された見守り支援システムも、ご入居者様の心拍や呼吸の変化を早く察知して駆けつけられるため、ご家族様やご見学のお客様からも「安心できる施設ですね」と大変好評です。当初は年配の職員を中心に操作への戸惑いもありましたが、メーカーさんの説明会や日々の丁寧なレクチャーを経て、今では全員がしっかり使いこなしています。